雨乞岳はヒルだらけ?僕らはBS探検隊! 一日目 出発から野営地まで

1 登山(関西)

第5回ボーイスカウト豊中地区キャンポリーでの豊中6団と豊中20団合同の場外プログラムを紹介しますね。

さすらい記録

記録: 2011.08.11
天候:晴れ
場所:雨乞岳
出発:武平トンネルのふもと
到着:御池鉱山旧跡
道程:


歩行:5時間
距離:約 5Km
力:★★★ (体力がいる)
技術:★★  (岩場多し)
見所:★  (渓流)
お店:★  (なし)
駐車: 武平トンネルのふもと
トイレ:なし
備考: 参加:18名
[6団BS隊ワイルドシーガル班]
たけし、たつや、みさき、のぶやす、あつき、まい
[20団BS隊トリ連合班]
こうき、みお、もえ、ともゆき
[20団BS隊マンモス班]
ゆうすけ、ゆうや、ひろと
[VS隊]
たかあき、せりな
[リーダー]
矢沢隊長、高浦副長(女性)、私(VS隊長)

●コース概略
一日目は、武平トンネル手前の登山口からコクイ谷分岐(地図のA地点)を抜けて廃鉱跡まで約5KMを歩く。
そこで野営をして一泊。二日目は雨乞岳から東雨乞岳を経由してコクイ谷の分岐まで往路を引き返して5KM歩く。

出発点の標高は800m。いったん950mまで登り沢を北上する。
杉峠への川の分岐(地図のB地点)の標高が755m。めざす雨乞岳は1238mだから標高差は約430m。
何度もアップダウンを繰り返すのと、川の岩場を歩くため見た目以上に厳しい。
平坦な道はほとんどなく、至る所に倒木がある。ベンチャー隊でもかなり手ごわい悪路だろう。
ヒルやアブが多い。川の水は飲める。標識がほとんどない。地図とコンパスは必携。
途中で崩落した場所や谷越えがあって、重いザックを背負った小学生にはザイルを使ったサポートが必要だ。
矢沢20団BS隊長、山田6団BS隊長と協議の結果、時間をかければボーイ隊でもいけると判断した。
せっかく第5回豊中地区キャンポリーでグリム冒険の森まで来たのだからこのコースを挑戦させてやりたい。
クリアできればBSスカウトのかなりの自信につながるだろう。
小学生が4名。中学生が9人。高校生1人。大学生1人。指導者3名。
女子スカウトは5名。
先週に下見を終えているが全般を通してかなりタフなコースである。

8月11日 快晴 朝6時半

グリム冒険の森を3台の車に分乗して出発した。
通行止めになっている鈴鹿スカイラインの武平トンネルの手前が目的地だ。
ここから2台の車は「グリム冒険の森」まで引き返す。私の車は非常時に備えて置いておく。
翌12日は午後4時にバスが迎えにくることになっている。
ここに来て、山田6団隊長は体調不良のため参加できなくなった。
本人も相当悩まれたが、みんなにかえって迷惑をかけることになるという理由で断念した。
残念だがやむを得ない。
私が6団の担当リーダーとなる。
6団スカウト達は前回のキャンプでもいっしょだったので顔なじみだ。
班長を除くとみんな無口なスカウトばかりだが少し緊張しているように見える。無理もない。
よろしくな。といって声をかける。
全員が装備をチェックする。
塩水につけて乾かした靴下を足に巻く。その上から40%に希釈したエタノールをスプレーする。
ヒル対策である。血を吸われると精神的にダメージが大きい。
升田、田中、吉川、袖川の4人は長靴を履いている。水辺を歩くのとヒル対策の両方を兼ねている。
全員で記念撮影をしてから出発。二日分の食糧と水分、それに野営用のブルーシート等を背負う。
みんなけっこうな重さを担いでいる。
矢沢隊長はザイルも背負う。

天気予報は今日と明日は晴れの予報。ちょっと安心。
しかし、山の天気は気まぐれだから注意しなくてはいけない。
腕時計の気圧計と標高を見ながら進むことにする。シルバコンパスはザックの右肩にくくりつけている。
念のためGPS(TripMate850)を装備している。5秒ごとにログを取得するロガータイプだが、緯度と経度も100分の1秒単位で表示する。
今までGPSによる地図読みは十分練習してきたので正確な位置をつかむ自信はある。
地図はカシミールで経緯度10秒ごとに線を入れた詳細データを用意した。
ラフな計算で緯度10秒は300m。経度10秒は250m。2万5千分の1の地図と縮尺がよく似ている。
指導者は特定小電力のトランシーバーも携行する。山の中で携帯は通じない。
右ひざに不安が残る私は、今回もレキのダブルストックを使うことにした。
さあ、行こう。

橋のたもとに登山口がある。
車で送ってくれた6団の矢野副長、吉本副長、山田隊長が見送ってくれた。

0737 出発

道は一人がかろうじて通れる幅しかない。一列になって進む。最初は杉林の中を行く。
先頭は矢沢隊長。それにトリ連合班(ハヤブサ班とツバメ班)。高浦副長、マンモス班。藤東VSスカウト、6団スカウト。最後が私。
スタートしてすぐにルートを間違えた。下見のときと同じだ。
道や標識など、ろくにないところだから無理はない。どこを見ても同じように見える。
矢沢隊長は、あらかじめ方向はわかっているのですぐに修正して正しいルートを進む。
初級スカウト達はそんなことにはおかまいなしに下を見ながら黙々と前のスカウトについて行く。
地面にヒルがいないか気になる。

20分ほど歩くと、崩落した部分にさしかかった。トラロープが架けてある。
一人ひとりロープを握りながら3メートルあまりを渡る。
矢沢隊長が受け手、私が送り手となる。
小学生スカウトにとっては最初の関門である。
体に対してザックが大きすぎるためにバランスを崩してしまいそうになる。
矢沢隊長が、スカウトの後ろから支えながら上へ押しやってやる。
時間がかかったが全員がクリアした。

0810 小休止。

下見の時に山田6団隊長がヒルに吸われていることに気がついた場所である。
今回はまだヒルの被害にあったスカウトはいない。
みんな噴き出る汗を拭いながら、水分を補給する。水を飲んでもすぐに汗になるっていう感じだ。
ムッとした森の熱気にスカウト達は顔を火照らせている。
ここまでのペースは想定した時間のほぼ2倍はかかっている。時速1㎞ってとこか。
崩落部分をクリアするのに時間がかかった。
それに、列が前後に50mは離れるので少し立ち止まって待つとかなりの時間食う。
トランシーバーはとても役に立っている。これは正解だった。
山の巻路をぐるりと歩き、数度のアップダウンを歩く。
泣き言を言うスカウトはいない。

0918 第一分岐点(地図のA地点)

往路と復路の分岐点に到着した。
予定のコースタイムは出発してから1時間10分だが実際には1時間40分かかっている。
1.4倍の時間計算だ。今後のペース配分はこのタイムを頭にいれることにした。
ここからコクイ谷の沢ぞいに北上する。
先週の下見のときには地面を目を凝らしてみると、ヒルがうじゃうじゃいたが今日は見当たらない。
まったく1週間違うだけでずいぶん違うもんだ。
スカウト達はバテてはいない。佐藤澪と佐藤萌が真っ赤な顔をしている。
中津は汗ひとつかいていない。藤東もそうだ。やはりVSともなると体力がある。
高浦が短く散髪しているのがよかったのかほとんど汗をかいてない。

十分に水分を摂るように矢沢隊長から指示がでる。
熱中症になる前に水分を補給しておかなければならないからだ。
見渡してみるとザックの腰ベルトがスカスカのスカウトがいる。
袖川は腰が細すぎて締めることができない。でもうまく歩いている。
小澤はザックを大きく揺らしながら歩いているので肩ひもを締めるよう指示する。
しんどいとちょっとベソをかいている。
ザックの揺れは体力を消耗するから心配だ。大丈夫と励ましておく。
ヒルが靴についているスカウトはいない。ヒル対策は今のところ有効だ。
ここから河原を進むことになる。

0943 事件発生

先頭を歩いていたグループから、永坂が蛇にかまれたと大声で叫んでいる。
何事かと駆けつけてみたら、蛇のしっぽを捕まえようと近寄ったときにかまれたのだそうだ。
その場で矢沢隊長が蛇を殺して捕獲。
永坂は冷静だった。
すぐに軍手を外して右手薬指から口で何度も毒を吸い出している。そして、川の水で洗い流す。
彼の指をとって血を絞り出した。「痛いっ!」「我慢しろ。」
彼は10数分はひたすら噛まれたところから血を絞り出して毒を吸い出しては川で手を浸す。
(後でわかったことだが、この処置が実に適切な対応だった。ただし、口で吸いだすのは推奨されていない。流水で患部から血を洗いだしたのがよかったのだ。永坂はスカウトハンドブックの毒蛇の対応のところを読んでいた。)
しかし、見る見るうちに右手薬指が親指くらいに腫れてきた。患部をみると、うっすらとかまれた跡が一か所。蛇の種類はよくわからないが、マムシかもしれない。
先週の下見の時にはヤマカガシを3匹見たがマムシは見なかった。
捕獲した蛇を袋に入れ、かまれた時刻をマジックで記入する。

ここは携帯圏外である。外部と相談することはできない。
指は相変わらず腫れて硬くなっているが、それ以上に大きくは腫れていない。協議の結果、矢沢隊長が永坂を病院へ連れて行くことになった。非常時に備えて車を置いておいたのがよかった。
一刻も早く戻るために、永坂はザックを他のスカウトに任せて身軽になる。
馬場が背負ってくれた。彼は背も伸びて体格も大きくなっている。文句ひとつ言うことなく、あっさりと背負ってくれたので感心した。
私がザイルを矢沢隊長から受け取り、車のキーを手渡す。
後で気づいたのだが、矢沢隊長が持っていたガスボンベを受け取るべきだった。
残ったスカウト達は、黙って我々リーダーのやりとりを見守っている。

1015 事件対応完了

矢沢隊長と永坂が出発点へと戻って行った。
残ったスカウト達ががんばれよって声をかけている。下りだから11時過ぎには登山口には戻れるだろう。車でグリムの森まで約30分だから、そこから病院までだと昼前には診てもらえるはずだ。

この時点で指導者は私と高浦副長だけになった。総勢16名だ。
先頭が私。中ほどを高浦副長。しんがりは大学生の藤東に頼んだ。
それぞれがトランシーバーを持つ。チャンネルは2-20にセットしてある。
単に20団というだけの意味のない数字(2-20)だ。
予定ではどんなに遅くとも午後4時には野営ポイントにつくはずだ。
全員に蛇には気をつけて歩くように指示。
「大丈夫ですよ。今、蛇に近寄るようなやつはひとりもいません。みんな注意してますから」と近藤。
うん、そりゃそうやな。
「よっしゃ、ほんなら、行くで!」
みんながうなずく。私も気合いが入った。

歩いて5,6分経ったころに大きな杉が一本見えた。
そこから谷へ5mほど下ったところでいったん川を渡り、沢へと続くV字型の急傾斜がある。
斜度は60度はあるだろう。山道といっても靴幅ほどしかない。
下見でチェックした第二の難所である。

1020 2番目の難所

ザイルでしっかりと道を確保しておいて、スカウトにゆっくり渡るように指示する。
みんな慎重だ。最後尾の藤東VSスカウトが、木にくくり付けてあったザイルを外す。

続く沢への急斜面は、小学生スカウトには荷物を持って降りるのが難しい。
いったん私が馬の背の部分にまたがる。
そこで、ザイルにザックを括り付けて下へおろすことにした。
高浦副長に先に行ってもらってザックを受け取ってもらう。
スカウトは体一つで急斜面を降りる。それなら、なんとか降りることができるだろう。

中継ポイントには、「ぼくがザックを下へおろす係りをします!」の一声で近藤が来てくれた。
おおー、すまん。彼は頼りになるスカウトになった。
こうして、ひとりずつザックをおろし、体一つで斜面(約60度)を慎重に降りる。

1053 クリア

小学生が一番心配だったが、30分かけて難所をクリアした。川を伝って歩く。しばらく行くと川の分岐に差し掛かった。ほっとした後で、気が緩んでしまったのか道を誤った!
この分岐を杉峠への分岐と勘違いして左へ進んでしまったのだ。
私が持っている地図は2万5千分の1の地形図。
この辺りは「迷」というマークがある。そして迷った。北北西に進路をとらなければならないのに、東北東の川沿いに進んでいる。なんどもコンパスとGPSを見比べる。200mは進んだだろう。
我々は地図には表示されない小さな支流を進んでいると判断した。迷った時は引き返せの鉄則にしたがって、川の分岐まで戻る。スカウト達は文句も言わずついてくる。ごめんな。

1130 正しいルートを進む

今度は右へと川沿いを進む。間違いない。誘導テープもちらほら見える。
倒木が至るところにある。岩がごつごつしているのでまっすぐ進めない。小さな滝をいくつも越える。できるだけ上の道を上り下りして滝をエスケープする。
途中で、濡れた岩場を2mほど渡る場所があった。滑ると危ない。
その下は水深70-80cmくらいの川溜まりである。おぼれるような深さではない。
私が先に渡って、危なそうなスカウトには手を貸した。
何人かが無事に通過したが、馬場が足をつるっと滑らせた!思わず私の左腕が伸びる。彼の右足がくるぶしの上まで水に浸かる。ぎりぎりセーフ!
次に佐藤澪。私の手首を持てと指示する。しっかりと握り直す。
すると、彼女も同じ場所で足を滑らせた!これも間一髪、左腕で支えた。
さらに佐藤萌。同じようにしっかりと手をつなぐ。
ゆっくり。の掛け声で渡りはじめたとたん、ツルっと両足が岩場から離れた!!
おおっ、みんなが声を上げた瞬間。
スローモーションのようにゆっくりスイングしながら私の左腕にぶら下がった。
私と佐藤萌の視線が合う。あと50センチで川面が映る。
渾身の力で引き上げる。時間にして数秒。
危なかった!もう少しで落ちるところだった。腕が抜けるかと思った。
重いザックを背負っているので重量があるのだ。
確か映画のクリフハンガーでこんなシーンがあったなと思いだした。
この後に続く小学生スカウトが心配だ。3人続けてなので腕がしびれている。

そのやりとりを見ていた小学生たち。なんと、あっさりと渡ってきた。
それまでのルートではなく水面ギリギリのところを踏んできたのだ。
観察していて安全なルートを発見したのだろう。
一人がごく安全に渡るとその後は楽だ。
私が最初に滑りやすいルートをたどったので後続のスカウトを滑らせる結果となってしまった。
すまん。もっと、慎重にいかなくては。

そろそろお腹が減ってきた。
どこかで昼食にしたい。できたら、杉峠への川の分岐(地図のB地点)までは進みたい。
みんなにどうする?と聞くと、津嶋スカウトが腹が減ったという。
じゃあ、適当な広い場所についたらお昼にしよう。
そこで川遊びしながら昼食にしようか。
みんな賛成。

1225 昼食

昼食。川の水でラーメンを作る。
重いザックを下し、靴を脱いで川に入る。冷たい。汗が引く。

すると津嶋班長が大声で叫ぶ。
ヒルに吸われてるって!見ると、靴下が血だらけである。
もう、テンション下がるって!なんども大声で嘆いている。
その割にはなんかうれしそうだ。染川が面白そうに見ている。
大丈夫ですって。そのくらい。
他の班員はじっと彼のことを見ている。やはり寡黙だ。
下見のときの山田6団隊長とレスポンスが同じだな。
隊長に似てるなと思う。

コッヘルでお湯を沸かしてラーメンを作る。
地区から配給があった昼食はチキンラーメンと札幌一番ラーメンだ。
どちらを食べてもよい。でもあれだな。お湯だけでできるラーメンが一番いいな。
ゴミも少ないし簡単に作れる。
ここでガスボンベが一つ足りないことに気がついた。矢沢隊長の分だ。
明日の昼食のガスボンベが足りなくなるかもしれない。その時はその時と割り切ってお湯を沸かした。

全員、おいしそうにラーメンを食べる。
余った時間は川遊びをしてもよいことにしている。みんな、楽しそうだ。冷たい水は心地よく、時たま吹く風も汗を取り去ってくれる。しばらくゆっくりする。
みーんみーん。近くでアブラゼミの鳴く声が聞こえる。

1330 出発

再び荷造りして出発する。予定より2時間は遅れている。
しかし、十分に余裕をみているので心配はしていない。どんなにゆっくりペースでも午後4時にはつくだろう。あいかわらず晴天だ。

隊長!これなんですか?と近藤スカウト。
見ると立派な鹿の角だ。
おおっ、君はめっちゃラッキーアイテムをゲットしたな。まさに自然を感じた。この角は彼の宝物になるだろう。馬場がうらやましそうに見つめている。

1356 地図のB地点

杉峠への川の分岐に到着。標高は750m。
地図とGPSで場所を確認する。よし。


地図を開くたびに升田が覗き込む。興味深々だな。今度は一転して西へ進む。
目的地まで直線距離で1.5KMだ。標識には杉峠まで75分とある。
途中から尾根沿いの普通の山道を行くのでスピードは出る。平均時速1KMとして16時までには着く。危険な場所もない。
ここでひらめく!
おい、みんな。実はこれからのコースは下見のときも迷ったんや。
みんな協力して助けてくれ。誘導テープがあるからそれを発見して正しい道を探してほしい。
みんなうなずく。
そうして川沿いを西へ進む。みんな岩場を歩くのが上手になっている。

1430 下見のときに迷ったポイント

下見の時に迷ったポイントにさしかかる。正しいルートがよくわからない。
スカウト全員が目を皿のようにしてテープを探す。
あった!あそこにある!
見つけたスカウトが教えてくれる。目標ができると行動は迅速だ。

武平トンネルから出発して7時間。歩行時間は5時間強だ。
みんな少し疲れてきているのを感じる。
あと何分で到着するかとか、あとどれくらいの距離かを頻繁に聞いてくるからだ。
あと少しだからというと、隊長のあと少しは長いからなと声が聞こえる。
地図で現在位置と目的地を示してもピンとこないようだ。

川を離れて尾根沿いを歩くと普通の山道になる。
歩きやすい道だなあとスカウト達。

1532 御池鉱山旧跡

御池鉱山旧跡に到着。明治時代末期までここに300人くらいの人々が暮らしていた。
私、佐藤澪、佐藤萌、近藤、中津、高浦、馬場の順で到着。
しばらくして後続部隊も到着。ゴールが近いと表情も明るくなる。
さあ、野営地までほんの数分だ。

続き

後半につづく

以上

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